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2008/05/26

【正論】作家・堺屋太一 公務員制度改革を実現せよ

今の国会に国家公務員制度の改革法案が提出されている。与野党の対立や審議日程から成立を危ぶむ声もあるが、ぜひとも成立させてもらいたい。これこそ、日本を救う最重要課題である・・・。<br />  規模が大きく、資産や権力基盤も確立した組織が「死に至る病」は3つしかない。第1は機能組織の共同体化、第2は環境への過剰適合、第3は成功体験への埋没だ。現在の日本の国家公務員(官僚)機構は、この3つすべてにかかっている。<br />  民間でも、「死に至る病」に取りつかれて倒産消滅した巨大企業や大手銀行は数多い。ところが官僚機構の場合、悪くなっても倒産消滅するわけではない。昨今は年金問題や医療問題、建築許可の遅延など「官僚の失敗」は多いが、官僚組織が責任を取って縮小消滅することはない。<br />  むしろ不全や失敗が発覚すれば、それを補う組織ができ予算が付き天下りが増える。だからこそ、国会と国民は、常に官僚制度を監視し、適切な改革を行わねばならない。<br />  現在の官僚機構の問題点は何か。その第1は、長年の業務別縦割り組織と仲間評価の人事で、強固な官僚共同体に化している点である。<br />  官僚はみな、自分の役所の権限と自らの人事しか考えない。隙あらば理屈を付けて規制を強化し、国民に不便と手間をかけさせる。いわゆる「省あって国なし」の状況である。<br />  この結果、機能組織の共同体化を象徴する年功人事、仲間貢献者の出世、情報の秘匿や操作の現象が慣例化している。<br />  ≪官僚を身分から職業に≫<br />  業務急拡大の厚生労働省は人材不足、経済産業省や農林水産省では、かつては主要業務の業界指導や生産流通管理の仕事が減った。それでも省をまたぐ幹部の交流人事はできないし、民間からの登用も進まない。役所のポストも天下り先も、各省別に利権化している。<br />  官僚にはキャリア組(エリート幹部)は70歳くらいまで天下りの権利を持つ「身分」と信じている者も多い。これを国家国民のために働く「職業」にしなければならない。<br />  今回の改革法案では、幹部公務員を人事庁で一元管理することで、他省庁からも、一般職や技術職からも、民間や学界からも、適切な能力者を官僚機構に採用できる仕組みを作っている。<br />  第2は環境変化に対応して、真の民主主義、議院内閣制に戻ろう、ということだ。<br />  戦後の日本は、規格大量生産の確立を目指して、業務別縦割り官僚が各業界を主導する態勢を採ってきた。物財の豊かさを幸せと信じる近代工業社会なら、それも有効だった。日本が一時、1人当たりGDPで実質世界一になり得た原動力の一つはこれだろう。<br />  しかし、人類の文明は変わった。物財の豊かさよりも、主観的な満足の大きさが重視される知価社会になった。ここでは官僚主導による規格規制よりも、民意を反映した政治主導が必要である。<br />  今回の改革で、内閣の主導と責任を明確にし、大臣の人事権を確立する。「内閣の方針はともかく、大臣のご意向は別として、わが省の考えは」などと官僚が国会議員に触れ回るのは、民主主義にあるまじきことだ。<br />  ≪倫理と評価の基準を≫<br />  国会議員は悪ければ国民が落選させられる。だから世論を気にし、国民を恐れる。ところが官僚は、国民が任命することも解雇することもできない。彼らが恐れるのは、仲間の評判である。<br />  昭和の時代には、日本の官僚は優秀だ、といわれていた。規格大量生産の確立に成功し、経済の成長や基礎教育や治安を良好に維持できたからだ。<br />  ところが今日、日本の官僚評価は必ずしも高くない。財政にしろ外交にしろ、抜本的な問題解決は何一つできない。規制緩和は頓挫し、年金改革は立ち消えだ。その上、行政の情報化文章化が遅れ、対面情報に頼るところが大きい。高度成長時代の成功体験から抜け切っていないのである。<br />  今回の改革では、官僚の倫理と評価についても新しい基準を示している。<br />  何事であれ大改革は難しい。「現状は悪い」という点では一致する人々の間でも、改革の具体的な内容となると十人十色、各項目別に異論が出る。<br />  本件では、改革の必要性については与野党が一致しており、民主党案には、政府案よりも急進的な部分もある。<br />  だが、与野党双方が主張を譲らなければ、よりよい改革ができるものではない。悪(あ)しき現状が続くだけである。本件だけは政局を越えて成立させてほしい。(さかいや たいち)
(続きを読む)(産経新聞080526)<br /> (人事院発行国家公務員試験採用情報ニュース第28号改訂版080430より転載許諾済)

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